墓じまいをしたいのに、まとまった費用を用意できずに立ち止まってしまう。そんな悩みを抱える方は少なくありません。墓石の撤去や供養、新しい納骨先の費用を合わせると数十万円単位になることも多く、一度に払うのは簡単ではないものです。かといってそのままにもできず、どうすればいいか答えが出せずにいる方も多いはずです。
費用が払えないと感じても、進め方を工夫すれば負担を無理のない形に近づけられます。費用そのものを抑える方法もあれば、分割払いや公的な支援を使う方法もあります。選択肢を知っておくことが、行き詰まりから抜け出す手がかりになります。
この記事では、墓じまいの費用が払えないときにまず考えることから、費用を抑える方法、分割払いやローン、公的な支援、先延ばしのリスク、無理のない進め方までをまとめて解説します。自分に合った選択肢を見つける手がかりとして読み進めてみてください。
費用が払えないときにまず考えること
費用が払えないと感じたときは、あわてて結論を出す前に、今の状況を落ち着いて見直すことが大切です。全体像をつかめば、どこを削れるかが見えてきます。ここでは、費用が払えないときにまず考えることを解説します。
総額を把握する
最初にすべきは、墓じまいにいくらかかるのか総額を把握することです。費用が払えずに墓じまいを断念する方は実際にいます。鎌倉新書の「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」では、墓じまいを断念した理由の1位が「解体費用が高すぎる」で22.2%を占めていました。
だからこそ、撤去工事費、閉眼供養のお布施、離檀料、新しい納骨先の費用を項目ごとに見積もり、まず全体像をつかむところから始めましょう。同じ調査では費用は31万〜70万円が最も多く31.3%、約半数は70万円以下に収まる一方で、151万円以上も14.0%と幅が大きいこともわかっています。総額がわからないまま「払えない」と諦めてしまうと、工夫で下げられた部分も見えません。まずは複数の業者から見積もりを取り、何にいくらかかるのかを書き出してみましょう。
優先順位をつける
総額を把握したら、費用の中で何を優先し何を抑えるかを考えます。総額を最も大きく左右するのは供養先です。先の調査でも改葬後の移転先は永代供養の合祀が43.2%で最多となっており、ここの選び方しだいで負担は大きく変わります。反対に、撤去工事や行政手続きのように省けない固定的な費用もあります。
すべてを一度にそろえようとせず、削れる部分と削れない部分を分けて考えましょう。優先順位をはっきりさせれば、限られた予算でも進める道筋が見えてきます。まずは供養先から見直し、動かせる費用と動かせない費用を仕分けてみてください。
費用を抑えて墓じまいする方法
払えないと感じたら、まず費用そのものを下げられないかを考えます。進め方しだいで、総額は大きく変わります。ここでは、費用を抑えて墓じまいする方法を解説します。
相見積もりを取る
費用を抑える基本は、2〜3社から相見積もりを取ることです。撤去工事費は業者によって差が大きく、1社だけでは適正かどうか判断できません。複数を比べれば、不要なオプションを外したり、内容の違いを見極めたりできます。見積もりは無料の業者がほとんどです。整地費まで含めた総額で見比べれば、数万円の差が出ることもあります。
同じお墓でも、重機が入れるかどうかや区画の広さによって撤去費は上下します。現地を見ずに出した概算より、実際に足を運んでもらった見積もりのほうが数字は正確です。ほかにも費用を抑える工夫は墓じまいを安くする方法にまとめています。手間を惜しまず複数社に依頼し、総額で比べてみましょう。
供養先を安いタイプにする
総額を最も左右するのは供養先なので、費用を抑えたいなら安いタイプを選ぶのが効果的です。合祀タイプの永代供養墓や合同の散骨なら、納骨費用を10万円前後に抑えられます。先の実態調査でも移転先の1位は合祀の永代供養で43.2%を占め、費用を抑えやすい選択が主流になっています。個別安置やお参りのしやすさに強くこだわらなければ、選択肢はさらに広がるでしょう。
ただし合祀を選ぶと、あとから遺骨を取り出せなくなる点だけは家族で確認しておく必要があります。個別安置の期間を設けたうえで合祀に移すタイプなら、費用と気持ちの折り合いをつけやすくなります。供養先を費用の面から選び直すだけでも、総額は大きく下げられます。家族で何を優先し、何を妥協できるかを話し合ってみてください。
離檀料を相談する
寺院墓地を引き払う場合の離檀料は、住職との話し合いで決まります。先の調査によると離檀料の相場は3万〜20万円ほどで、法律上の支払い義務があるものではありません。高額を提示されて戸惑ったときも、すぐに約束せず、相場や事情をふまえて相談しましょう。墓じまいを決めた事情や、費用が苦しい状況も、正直に伝えてよい部分です。
離檀料は本来、これまで供養してもらったお礼という位置づけのお布施です。相場を大きく外れた金額を提示されたときは、その根拠をたずねてもかまいません。それでも折り合わないときは、行政書士に間に入ってもらう方法もあります。感情的にならず、早めに意向を伝えて無理のない額を相談してみてください。
自分でできる手続きを担う
代行に頼む部分を減らし、自分でできる手続きを担うことでも費用を抑えられます。改葬許可の申請や書類の取り寄せは、時間はかかりますが自分で行えます。手続きを自分でこなせば、その分の代行費用がかかりません。手続きの全体像は墓じまいの流れで確認できます。
改葬許可の申請では、今の墓地の管理者と移転先の双方から証明の書類をそろえる必要があります。平日に役所へ足を運べる方なら、この部分は自分で進めやすい作業です。動ける範囲は自分で担い、負担の大きい部分だけ業者に頼めば、費用を抑えながら進められるでしょう。まずは自分でできそうな手続きを書き出してみましょう。
分割払い・ローンを使う
費用を抑えてもなお一度に払うのが難しいときは、支払いを分ける方法があります。分割払いやローンを使えば、月々の負担を軽くできます。ここでは、分割払い・ローンを使う方法を解説します。
クレジットや分割払い
撤去工事の業者や供養先によっては、クレジットカード払いや分割払いに対応しているところがあります。一度にまとまった額を用意できなくても、月々に分けて支払えます。対応の可否は業者ごとに異なるため、契約前の確認が欠かせません。分割回数や手数料も業者によって違います。
石材店の中には、現金払いのみという店もまだ残っています。カードのポイント還元や分割の金利まで含めて、どの支払い方が結局お得かを見比べておくと安心です。まとまった現金がすぐに用意できないときほど、こうした支払い方法が助けになるでしょう。分割払いを希望するなら、見積もりの段階で対応しているかをたずねてみましょう。
メモリアルローン
金融機関の中には、葬儀や墓じまいの費用に使えるメモリアルローンを扱うところもあります。多目的ローンを利用できる場合もあり、まとまった費用を借り入れて分割で返済できます。ただし、利息や手数料がかかる点は押さえておく必要があります。借入額と返済計画は無理のない範囲で組みましょう。
金利や返済期間は金融機関ごとに条件が違います。申し込みの審査では、収入やほかの借入の状況が見られます。契約の前に、毎月いくらまでなら返せるかを家計から逆算しておくと、無理のない借り方ができます。ローンを検討するなら、総返済額を確かめたうえで利用を判断してみてください。
利用時の注意
分割払いやローンは負担を分散できる一方で、手数料や利息がかかります。総額が当初より増えることは理解しておきましょう。返済が生活を圧迫しては本末転倒です。月々いくらまでなら無理なく返せるかを、契約前に決めておくことが大切です。
手数料の割合や実質年率は、契約書の細かい欄に書かれています。署名する前に、その数字を必ず自分の目で追っておきましょう。目先の支払いを楽にすることだけを考えて組むと、後の返済で苦しくなりかねません。分割やローンを使うときは、総額と返済計画を必ず確認し、無理のない範囲で利用してください。
公的な支援・補助を活用する
支払い手段を工夫するだけでなく、公的な支援を使える場合もあります。使える制度があれば、負担をさらに軽くできます。ここでは、公的な支援・補助を活用する方法を解説します。
自治体の補助金
墓じまいを直接の対象にした国の補助制度はありません。改葬について定めた墓地埋葬法にも、費用を補助する規定はないためです。使えるのは、公営墓地の返還を促すために市区町村が独自に設けた助成に限られます。たとえば千葉県市川市では原状回復費用として21万〜44万円の助成と使用料の返還を、群馬県太田市では墓石撤去費用の助成を設けています。
対象は市営霊園の使用者で、継ぐ人がいない、管理に不安があるといった条件が付くのが一般的です。制度の有無や条件は墓じまいの補助金でくわしく確かめられます。お墓のある市区町村の窓口で、補助が使えるかを早めに確認してみましょう。
生活が苦しいときの相談先
生活が苦しく費用の工面が難しい場合は、一人で抱え込まず相談先を頼りましょう。自治体の福祉窓口や、消費生活に関する相談窓口が、状況に応じて助言をくれます。親族と費用を分担できないかを話し合うことも一つの手です。収入や資産の状況によっては、生活の立て直しに関する制度を案内してもらえることもあります。
放置してしまう前に、使える制度や支援がないかを確かめておくと安心です。相談したうえで進め方を決めれば、後悔の少ない選択がしやすくなります。困ったときは、まず電話一本で今の状況を伝えるところから始めてみてください。
墓じまいを先延ばしにするリスク
費用が払えないからと墓じまいを先延ばしにすると、かえって負担が増えることもあります。放置のリスクを知っておくと、早めに動く判断がしやすくなります。ここでは、墓じまいを先延ばしにするリスクを解説します。
管理費がかかり続ける
お墓をそのままにしておくと、墓地の管理費が毎年かかり続けます。年間数千円から数万円の管理費が、何年も積み重なれば大きな負担になります。墓じまいを先延ばしにするほど、支払う管理費の総額は増えていきます。使わないお墓に費用を払い続けるのは、もったいないことでもあります。
管理費の滞納が続けば、督促の連絡が届き、最終的には区画を使う権利そのものを失うこともあります。目先の出費を避けたつもりの先延ばしが、かえって総額を膨らませてしまうのです。使う予定のないお墓ほど、早めに区切りをつけるほうが結局は費用を抑えられます。管理費の負担を思い出したら、まず来年の支払い予定を確かめてみましょう。
無縁墓になる恐れ
管理費を滞納したまま放置すると、お墓が無縁墓として扱われる恐れがあります。無縁墓になると、墓地の管理者によって遺骨が合祀され、区画が撤去されることがあります。これは墓地埋葬法にもとづく手続きで、自分の意思とは関係なく処理が進んでしまいます。
無縁墓として整理されるまでには、官報への掲載など一定の手順が踏まれます。とはいえ、いったん合祀されてしまうと、個別に遺骨を戻すのは難しくなります。先祖の供養を、望まない形で終えることにもなりかねません。そうなる前に、費用を工夫してでも計画的な墓じまいを選び、早めに手をつけておきましょう。
継ぐ人への負担
墓じまいを先延ばしにすると、いずれお墓を継ぐ人に負担が回ります。管理費の支払いや将来の墓じまいを、子や孫が引き受けることになります。自分が動けるうちに整理しておけば、次の世代に重荷を残さずに済みます。先の実態調査では、墓じまいを断念した理由に「気持ちのうしろめたさ」が11.1%、「家族の理解が得られない」が7.8%も挙がっていました。
費用だけでなく、こうした心配ごとも先送りするほど解きにくくなります。遠方に住む子どもが管理を引き継げば、帰省のたびの手間や交通費まで背負わせることになります。家族の将来の負担を考えて、早めに手をつけることを検討してみましょう。
費用が払えないときの進め方
リスクを踏まえたら、実際にどう動くかを一つずつ確認します。一人で抱えず、周囲と協力すれば道は開けます。ここでは、費用が払えないときの進め方を解説します。
家族で負担を分ける
墓じまいはお墓に関わる家族みんなの問題なので、費用を一人で抱えず家族で分担を相談しましょう。兄弟姉妹がいれば、負担を分けることで一人あたりの金額を抑えられます。先の調査で断念理由の一つに「家族の理解が得られない」が挙がっていたように、事前の共有ができていないと話がこじれやすくなります。
相談なく進めると、あとで費用の分担をめぐってもめることもあります。口約束だけで進めず、誰がいくら出すかをメモに残しておくと、後の行き違いを防げます。家族で協力すれば、払えないと感じた費用も現実的な計画に変わります。総額と内訳を共有し、誰がどれだけ負担するかを早めに話し合ってみましょう。
専門家に相談する
費用の工面や進め方に行き詰まったときは、専門家に相談する方法もあります。墓じまいに詳しい業者や行政書士は、費用を抑える方法や使える制度を教えてくれます。自治体の窓口も、補助金や支援について相談に乗ってくれます。一人で悩むより、事情を知る専門家に相談したほうが解決の糸口が見つかります。
行政書士に頼めば、改葬許可の書類集めや役所とのやり取りを代わりに進めてもらえます。費用はかかりますが、平日に動けない方にとっては時間の節約になります。どこから手をつけるか迷う段階でも、相談すれば次の一歩が具体的になるでしょう。抱え込まず、早めに相談先を頼ってみてください。
まとめ
墓じまいの費用が払えないと感じたときは、まず総額を把握し、削れる部分と削れない部分に優先順位をつけることが出発点です。実態調査でも断念理由の1位は「解体費用が高すぎる」で、費用の壁は多くの方に共通しています。費用を抑えるには、相見積もりを取り、供養先を合祀など安いタイプにし、離檀料を相談し、自分でできる手続きを担う方法があります。それでも一度に払えないなら、分割払いやメモリアルローン、市区町村の補助金や福祉・消費生活の相談窓口を活用できます。先延ばしにすると管理費がかかり続け、無縁墓になったり継ぐ人の負担が増えたりするため、早めの対応が大切です。まずは総額を把握し、費用を抑える方法と支払い手段を組み合わせて、家族と相談しながら無理のない計画を立ててみてください。


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