墓じまいの補助金|対象になる条件と自治体の実例を解説

費用

墓じまいには数十万円単位のお金がかかることも多く、少しでも負担を減らせないかと考える方は少なくありません。そんなとき気になるのが、自治体の補助金や助成が使えるかどうかです。

厚生労働省の衛生行政報告例によれば、遺骨を移す改葬の件数は2022年度に全国で15万1076件と過去最多を更新し、墓じまいは年々身近な選択になっています。ただ、それを支える補助金となると話は別で、国の制度はなく、あるのは一部の自治体が独自に設けた助成にとどまります。「補助金があるはず」と探すより、まず自分のお墓のある自治体に制度があるかを確かめる姿勢が欠かせません。

この記事では、墓じまいの補助金の全国的な状況から、実在する自治体の助成額、対象になる条件、申請の進め方、補助金以外に費用を抑える方法までをまとめて解説します。自分が補助金の対象になるかを確かめる手がかりとして読み進めてみてください。

墓じまいに補助金はあるのか

墓じまいに使える補助金があるのかどうかは、多くの方が最初に抱く疑問です。結論から言えば、国の制度はなく、一部の自治体が公営墓地の返還を促す目的で独自に設けています。ここでは、墓じまいの補助金の有無について解説します。

国の制度はなく自治体ごとに分かれる

墓じまいそのものを対象にした国の補助制度はありません。遺骨の移動を定めた墓地埋葬法でも、改葬は今遺骨がある市区町村長の許可を受ける手続きとされ、費用を補助する規定は置かれていません。国に相談窓口があると思って探しても、該当する制度は見つからないのが実情です。

補助を出しているのは、市区町村が管理する公営墓地について、区画の返還を促すために独自の助成を設けた自治体に限られます。制度の名称も「返還促進事業」「墓石撤去費用助成」など地域ごとにばらばらで、統一された呼び方はありません。国の一律制度をあてにせず、まずはお墓のある自治体に助成があるかを個別に問い合わせてみてください。

公営墓地の返還が対象の中心になる

補助が公営墓地の返還に集中しているのは、自治体が空いた区画を次の利用者へ引き継ぎたいからです。長く使われず放置された区画が増えると、無縁墓の管理費用が自治体の負担としてのしかかります。返還に助成を出してでも区画を空けてもらうほうが、結果として管理コストを抑えられます。

一方、寺院墓地や民営霊園は自治体の管理外にあるため、こうした助成の対象になりません。同じお墓でも、公営か民間かで補助が使えるかどうかが分かれます。手続きに入る前に、自分のお墓が市区町村の運営する公営墓地かどうかをまず確かめておきましょう。

墓じまいの補助金がある自治体の実例

制度の中身は自治体ごとに大きく違うため、実際にどんな助成があるのかを具体例で見ておくと判断しやすくなります。ここでは、補助金を設けている代表的な自治体の実例を紹介します。

千葉県市川市の返還促進事業

市川市は、市営の市川市霊園で一般墓地を返す使用者に向けて、費用面の助成を二段構えで用意しています。市川市霊園一般墓地返還促進事業では、更地に戻す原状回復費用を、普通墓地なら2.5平方メートルで21万円、4.0平方メートルで24万円、6.0平方メートルで29万円、12.0平方メートルで44万円まで助成します。芝生墓地は7万5000円が上限です。

あわせて、使用許可から3年以内に未使用で返した場合は墓地使用料の2分の1、それ以外は4分の1が返還されます。対象は、お墓を継ぐ親族がいない方や管理に不安のある使用者です。公営墓地を使っているなら、こうした返還制度が用意されていないか、まず窓口で確かめてみてください。

群馬県太田市の墓石撤去費用助成

太田市も、市営の八王子山公園墓地で、無縁墓地対策として墓地の返還にかかる墓石撤去費用を助成する制度を設けています。使われなくなった区画の返還を促し、次の利用希望者へ引き継ぐのがねらいです。市川市のように原状回復費を細かく区分するのではなく、撤去費の助成という形をとっています。

申請の前には、納骨日や利用している墓所、墓地利用者名を事前に申告する手順が求められます。助成額や細かな条件は自治体の運用で変わるため、担当の花と緑の課へ直接たずねるのが確実です。近隣の自治体でも扱いが違うので、必ず自分の地域の制度を調べておきましょう。

補助金の対象になる条件

実例からわかるように、補助金には共通してついてくる条件があります。あてはまるかどうかを先に確かめておくと、無駄な準備を避けられます。ここでは、墓じまいの補助金の対象になる条件について解説します。

公営墓地を返還すること

多くの制度は、その自治体が管理する公営墓地を更地に戻して返すことを条件にしています。区画を残したまま補助だけを受け取ることはできません。返還には遺骨の移転先を先に決めておく必要があり、移す先が決まらないと更地にする工事にも進めません。更地に戻す工事の費用は、区画の広さによっては数十万円に達することもあるでしょう。

返還と助成を組み合わせている自治体もあります。市川市では、使用料の一部返還と原状回復費用の助成をセットで用意しています。公営墓地を利用しているなら、まず区画を返す前提に立ち、どの費用が助成の対象になるかを窓口で確かめてみてください。

自治体の使用者・住民であること

補助の対象は、その霊園の使用許可を受けている本人や、その自治体に住む方に限られるのが一般的です。お墓のある自治体と、いま住んでいる自治体が違う場合は、対象から外れることもあります。遠くの実家にあるお墓を墓じまいする方ほど、この住所の要件でつまずきやすいでしょう。

例外を設ける自治体もあります。市川市の返還促進事業では、移す先として市の合葬式墓地を使う場合に限り、市外の方の申し込みも認めています。住民票の住所が要件になる制度では、転居のタイミングも早めに確かめておくと安心です。自分が使用者や住民の要件にあてはまるかどうかを、申請の前に窓口で確認しておきましょう。

指定の書類をそろえること

補助金を受けるには、改葬許可証の写しや区画を返したことを示す書類、撤去工事の領収書などをそろえます。特に領収書は工事が終わらないと発行されないため、申請の時期を工事の日程に合わせて考えておく必要があります。書類に不備があると受理されず、再提出で数週間を無駄にすることもあるでしょう。

必要な書類の種類は自治体ごとに違います。改葬許可の手続きで使う書類と重なるものも多いため、まとめて用意すると二度手間を防げます。戸籍や墓地の使用許可証など、取り寄せに日数のかかる書類から先に動くと滞りません。早めに窓口へ連絡し、提出する書類の一覧を先に取り寄せておきましょう。

補助金の申請方法

対象になりそうだとわかったら、実際の申請の流れを押さえておきましょう。手順を知っておけば、書類の準備や手続きを滞りなく進められます。ここでは、墓じまいの補助金の申請方法について解説します。

自治体の窓口で制度を確認する

まずは、お墓のある市区町村の窓口で、制度の有無と中身を確認します。担当は霊園管理課や花と緑の課、生活環境課など、自治体によって名前が異なります。公式サイトに詳しい説明が載っていない自治体も多いため、電話や窓口で直接たずねるのが確実です。

問い合わせるときは言葉の選び方にも気をつけましょう。「墓じまいの補助金はありますか」と聞くより、「改葬」や「墓地の返還」という言葉を使うほうが担当者に伝わります。担当課がわからないときは、代表電話で改葬に関する助成の窓口を教えてもらうとつながりやすくなります。制度がある場合は、申請の期限や予算の上限も一緒に確かめておきましょう。

書類をそろえて申請する

対象になるとわかったら、改葬許可証や区画返還の証明、撤去工事の領収書など、指定された書類をそろえます。工事の領収書が要る制度では、宛名や記載内容の形式を業者へ前もって確認しておくと安心です。書類の取り寄せに数週間かかるものもあるため、余裕を持って動くことが欠かせません。

予算に枠を設け、申請が一定数に達すると受付を締め切る自治体もあります。年度の後半になるほど枠が埋まりやすいため、対象だと判明した時点で早めに動くほうが取りこぼしを防げます。郵送で受け付ける自治体もあれば、窓口へ持参する必要がある自治体もあるでしょう。書類がそろい次第、窓口へ申請しましょう。

改葬許可の手続きと合わせて進める

補助金の条件に改葬許可証が含まれることが多く、補助の手続きと改葬の手続きは自然と重なります。改葬許可の取り方や全体の段取りは改葬許可証の取り方でまとめて確認できます。二つの手続きを別々に進めると、同じ書類を二度取り寄せるような無駄が生じます。

撤去工事の見積もりを取る前に、指定の業者を使う条件がないかも合わせて調べておくと安心です。役所への相談は、改葬許可を申請する早い段階でまとめて済ませておきましょう。窓口が同じ課であることも多いので、一度の来庁で両方を片づける段取りで動いてみてください。

補助金以外に費用を抑える方法

補助金の対象にならない場合や、制度そのものがない自治体も多くあります。補助に頼らずとも、費用を抑える方法はいくつもあります。ここでは、墓じまいの費用を抑える方法について解説します。

相見積もりで撤去費を比べる

撤去工事の費用は業者によって差が大きく、2社から3社で相見積もりを取ると数万円単位の違いが見えてきます。見積もりを無料で出す業者がほとんどなので、比べること自体にお金はかかりません。1社だけで決めると、相場より高い金額に気づけないまま契約してしまうこともあるでしょう。

比べるときは、整地費や遺骨の取り出し費、処分費まで含めた総額でそろえます。項目を同じ条件にそろえないと、安く見える見積もりに割高な追加費が隠れていることもあります。詳しくは墓じまいを安くする方法もあわせて参考にしてみてください。

供養先を費用から選ぶ

墓じまいの総額を最も大きく左右するのは、遺骨の移し先の選び方です。合祀タイプの永代供養墓や合同の散骨を選べば、納骨にかかる費用を10万円前後まで抑えられます。個別の墓石を新しく建て直す方法とくらべると、金額の差は数十万円にもなります。

実際、鎌倉新書の調査でも、墓じまい後の移し先として費用を抑えやすい永代供養が多く選ばれています。補助金の有無より、供養先の選び方のほうが総額への影響は大きいものです。後々の管理費がかからない合祀を選ぶ方も増えています。お参りのしやすさや個別に安置したい気持ちとのバランスを見て、無理のない移し先を選びましょう。

離檀料を相談する

寺院墓地を引き払うときの離檀料は、住職との話し合いで決まり、相場は3万円から20万円ほどとされています。離檀料は法律で義務づけられた費用ではないため、相場や自分の事情をふまえて相談する余地が残されています。墓じまいを決めた経緯を丁寧に伝えると、寺院側が金額で歩み寄ってくれる例もあります。

相場を大きく超える額を求められ、折り合いがつかないこともあるでしょう。そのときは、お寺とのやり取りに慣れた行政書士などに間に入ってもらう方法もあります。感情的にならず、早めに墓じまいの意向を伝えることを心がけてください。

墓じまいの補助金に関するよくある質問

墓じまいの補助金については、対象範囲や申請時期など細かな疑問が残りやすいものです。最後に、検討している方からよく寄せられる質問にお答えします。ここでは、民間霊園での可否と申請時期の2点について解説します。

民間霊園や寺院墓地でも使えるか

基本的には使えません。補助金は公営墓地の返還を促す目的で組まれているため、自治体の管理外にある民間霊園や寺院墓地は対象になりません。市川市や太田市の制度も、どちらも市営霊園に限った助成です。民間の霊園で墓じまいをする方は、補助金をあてにしない前提で計画を立てる必要があります。

対象から外れた場合でも、費用を抑える手立ては残っています。相見積もりで撤去費を比べたり、費用の軽い供養先を選んだりする方法で総額は下げられます。民間霊園でも管理者によっては返還時の負担を軽くする独自の対応があるので、一度たずねてみる価値はあります。補助金にこだわらず、こうした節約策を組み合わせて資金の計画を立てましょう。

いつ申請すればよいか

改葬許可の手続きと同じ時期、遅くとも撤去工事に取りかかる前に、窓口へ相談しておくのが基本です。工事を始めてから制度を知っても、条件を満たせず対象外になってしまいます。助成の申請時期を先に押さえずに返還や撤去を進めると、受けられたはずの補助を取り逃すおそれがあります。

原状回復費用の領収書が要る制度では、工事が終わってからあらためて申請する流れです。予算の上限に達すると受付を締め切る自治体もあるため、墓じまいを思い立った時点で早めに確認しておきましょう。相談だけでも早いほうが、選べる手立ては広がります。

まとめ

墓じまいを直接対象にした国の補助制度はなく、あるのは一部の自治体が公営墓地の返還を促すために設けた独自の助成です。千葉県市川市では原状回復費用を最大44万円まで助成し、使用料の一部も返還します。群馬県太田市も墓石撤去費用の助成を設けるなど、内容は自治体ごとに大きく異なります。対象になるには、公営墓地の返還や使用者・住民であること、指定の書類をそろえることが条件で、民間霊園や寺院墓地は対象外です。制度がない場合でも、相見積もりや供養先の選択、離檀料の相談で費用は抑えられます。まずはお墓のある市区町村の窓口で、補助金の有無と対象条件を早めに確認してみてください。

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