喪中の年に年賀状が届いてしまい、どう返せばよいのか困っている方は多いでしょう。年賀状で返すわけにもいかず、黙っているのも気が引ける。そこで出番になるのが寒中見舞いです。
いざ書こうとすると、手が止まります。いつ投函すればよいのか、どんなはがきを使うのか、文面に何を書くのか。調べてみても、時期の説明が食い違っていたり、いまは買えないはがきを勧めていたりして、かえって決めかねるところ。
出す時期の考え方、寒中見舞いを使う3つの場面、そのまま差し替えて使える文例、いま実際に買えるはがきと切手までを順に説明します。明日にでも投函したい方は、文例の章から拾って読み進めてください。
寒中見舞いを出す時期
寒中見舞いの時期は、調べるページによって書いてあることが少しずつ違います。ここでは、公式の決まりがどこまであるのかと、実際に投函日を決める手がかりを説明します。
出す時期を定めた公式の決まりはない
寒中見舞いをいつ出すかについて、公式に定めた決まりは見当たりません。松の内が明けてから立春の前日までに出す、という説明が広く流布していますが、これは受け継がれてきた慣習であって、守らないと咎められる規則ではないところ。時期を外したから無効になる、という性質の便りでもありません。
日本郵便の案内にも、寒中見舞いの差出期間を定めた記述はありません。
決まりがないと分かると、かえって迷う方もいるでしょう。それでも手がかりはあります。年賀状の受け付けが終わり、正月の飾りを下ろす時期を過ぎてから届けば、年始の祝いとは切り離した挨拶として受け取ってもらえるはず。寒さが厳しい時期に相手の体を気づかう便り、という寒中見舞いの成り立ちからも、この時期に落ち着きます。日付そのものより、年賀の挨拶と重ならないことを優先して投函日を決めてください。
松の内が明けてから出すのが一般的とされる
松の内が明けてから出すのが一般的とされます。松の内は正月の飾りを立てておく期間のことで、関東ではおおむね1月7日まで、関西では1月15日までとされています。ただし関西のなかにも1月10日を区切りとする地域があり、全国で足並みがそろっているわけではありません。相手の住む地域の慣習が分からないなら、遅めに合わせて1月中旬に届くよう出せば、どちらの地域でも松の内を外せます。
年賀状の受け付けは例年12月15日に始まり、元日に届けるには12月25日ごろまでに出すのが目安。年賀状はこの流れで年末に集中して投函され、三が日に相手の手元へ届きます。寒中見舞いを松の内のうちに届けてしまうと、まだ年賀状が行き交っている最中に混ざり、年始の挨拶と見分けがつきません。1月7日を過ぎたあたりから投函の準備を始め、松の内が明けた日以降に届くよう逆算してみてください。
立春を過ぎたものは余寒見舞いになる
立春を過ぎたら、寒中見舞いではなく余寒見舞いに切り替えます。寒中見舞いは寒の内に出す便りとされ、寒の明けにあたる立春の前日までが目安。立春の日は年によって動きます。国立天文台が観測に基づいて算出し、前年2月の官報で公告する仕組みのため、2月4日で固定されているわけではありません。2027年の立春は2月4日と公表されています。
出すのが遅れたときは、文面の頭を「余寒お見舞い申し上げます」に差し替えるだけで済みます。中身の組み立ては寒中見舞いと変わらず、時候の言い方が変わるだけ。この切り替えも慣習で、いつまでに出さなければならないという定めはありません。年賀状を受け取ってから日が空いてしまった方は、無理に寒中見舞いの体裁にこだわらず、余寒見舞いとして出してください。
喪中に寒中見舞いを出す場面
寒中見舞いは、喪中の年になって初めて出番が回ってくる便りです。ここでは、喪中の側から出す場面と、喪中の相手へ出す場面を分けて挙げます。
喪中を知らない相手から年賀状が届いた
喪中はがきを出していない相手から年賀状が届くことがあります。仕事関係の相手や、年に一度だけ年賀状をやりとりする間柄だと、こちらの事情を知らないまま例年どおりに出してくるもの。この場合、年賀状で返すと祝いの言葉を交わすことになるため、松の内が明けてから寒中見舞いで返す慣習が広く案内されています。
返す相手は、年賀状をくれた方だけで足ります。喪中はがきを出しそびれた全員に送り直す必要はなく、届いた分に応えれば行き違いは収まります。文面では、年賀状の礼を先に置き、そのあとで身内を亡くして年賀の挨拶を控えた旨を書き添えてください。知らせていなかったこちら側の事情として書けば、相手に負い目を感じさせずに済みます。喪中の側の挨拶全般は、喪中の新年の挨拶の記事にまとめています。
12月の不幸で喪中はがきが間に合わなかった
12月に身内を亡くすと、喪中はがきが年賀状に間に合いません。日本郵便は、相手が年賀状の印刷の準備を始める前に届けるのが基本的なマナーだとし、11月から12月上旬に出すのが一般的だと案内しています。12月中旬を過ぎてから慌てて喪中はがきを出しても、相手はすでに年賀状を投函し終えている頃合い。
年賀状の受け付けは例年12月15日に始まるので、それ以降に喪中の知らせが届いても相手を戸惑わせるだけでしょう。喪中はがきを見送って、年明けの寒中見舞いへ切り替える形が広く取られています。年が明けてから、年賀状の礼と欠礼のお詫びをまとめて寒中見舞いで伝えれば、一度の便りで両方が片づきます。この切り替えも慣習であって、日本郵便が案内しているわけではないところ。松の内が明ける日を確かめて、投函の日取りを決めておきましょう。
喪中の相手へ年始の挨拶を送りたい
喪中はがきを受け取った相手に、年賀状の代わりとして寒中見舞いを出す方法があります。喪中はがきは年賀の挨拶を控えるという知らせであって、こちらからの便りを断る意味ではありません。年賀状を出せない代わりに、松の内が明けてから寒中見舞いを送れば、相手を祝わずに気持ちだけを届けられます。
文面では、祝いの言葉を外し、相手の体を気づかう言葉を中心に置きます。故人を悼む一文を入れてもかまいませんが、悲しみを掘り返す書き方は避けたいところ。相手がどう感じるか読み切れないなら、寒さへの見舞いと近況だけの短い文面にとどめるのが穏やかです。喪中の相手にどう接するかは、喪中の人への接し方の記事でも説明しているので、あわせて読んでみてください。
寒中見舞いの文例
寒中見舞いは、書く相手と事情によって中身が入れ替わります。ここでは、場面ごとに3本の文例を挙げて、どこを差し替えればよいかを添えます。
年賀状をいただいた方へ返す文例
喪中を知らない相手から年賀状が届いたときの文例です。年賀状の礼を先に置き、そのあとで欠礼の事情を述べる順にすると、相手を責める調子になりません。
寒中お見舞い申し上げます
ご丁寧な年賀状をいただきありがとうございました
昨年(月)に(続柄)(故人の名前)が永眠いたしましたため
年頭のご挨拶を控えさせていただきました
ご連絡が行き届かず失礼いたしました
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます
寒さ厳しき折 どうぞご自愛くださいませ令和(年)一月
括弧の中は差し替え箇所です。そのまま印刷せず、月・続柄・故人の名前を自分の場合に置き換えてください。:::
差し替えるのは、月と続柄と故人の名前の3か所。名前を出したくない家であれば「昨年 母が永眠いたしましたため」と続柄だけでも通ります。日付は投函する月に合わせ、立春を過ぎたら頭を「余寒お見舞い申し上げます」に替えてください。
### 喪中はがきの代わりに出す文例
12月に不幸があり、喪中はがきを出せなかった場合の文例。年賀状をもらった礼と、知らせが遅れたお詫びを一枚にまとめます。
> 寒中お見舞い申し上げます
>
> 新年のご挨拶をいただきありがとうございました
> 昨年十二月(日)に(続柄)(故人の名前)が永眠いたしました
> 本来であれば年内にお知らせすべきところ
> ご通知が遅れましたことをお詫び申し上げます
> 皆様には穏やかな一年となりますようお祈りいたします
> 厳寒の折 くれぐれもご自愛ください
>
> 令和(年)一月
年賀状が届いていない相手にも、この形で出せます。その場合は「新年のご挨拶をいただきありがとうございました」の一行を外し、逝去の知らせから始めてください。喪中はがきを出す時期を逃したことを長々と詫びる必要はなく、事実を短く伝えるだけで足ります。
### 喪中の相手へ出す文例
喪中はがきを受け取った相手へ、年賀状の代わりに出す文例です。祝いの言葉を外し、相手の体を気づかう言葉で組み立てます。
> 寒中お見舞い申し上げます
>
> ご服喪中と伺い 年頭のご挨拶は控えさせていただきました
> (故人の名前)様のご逝去を知り 驚いております
> 心よりお悔やみ申し上げます
> 寒さ厳しき折 どうぞお体を大切にお過ごしください
> 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます
差し替えるのは故人の名前だけ。名前を知らされていないなら「お母様」のように続柄で置き換えるか、その行を丸ごと外してもかまいません。訃報を喪中はがきで初めて知った場合でも、香典や供物の話は書かず、悔やみの言葉だけにとどめるのが穏やかな形です。長く付き合いのある相手なら、一行だけ近況を添えると事務的になりません。
## 寒中見舞いに使うはがきと切手
寒中見舞い専用のはがきは、郵便局に売られていません。ここでは、いま実際に買えるはがきと切手を確かめておきましょう。
### 官製はがきは鳩の通常はがきを使う
寒中見舞いには、郵便局で買える通常はがきをそのまま使えます。料額印面(はがきに印刷された切手の部分)の意匠は鳩で、一枚85円。日本郵便のプリントサービスも、喪中はがきの料額印面は鳩のデザインであり、寒中見舞いにも使用することができるはがきだと案内しています。切手を貼らずにそのまま投函できるはがきです。
胡蝶蘭の絵柄のはがきを勧めるページが、今も数多く残っています。ただしその商品は現在の郵便局では扱っておらず、通常はがきの意匠は鳩と小鳥の2種類だけ。インクジェット用の通常はがきが小鳥で、こちらも寒中見舞いに使えます。古い案内をもとに買いに行くと窓口で戸惑うので、郵便局では「通常はがき」と伝えて買い求めてください。
:::caution 胡蝶蘭のはがきと63円の通常はがきは、2024年9月30日で販売が終わりました。喪中には胡蝶蘭という説明が今も残っていますが、現在は選べません。:::
### 私製はがきには弔事用85円普通切手を貼る
手持ちの私製はがきや、絵柄を選んで作ったはがきで出すなら、切手を自分で貼ります。弔事の便りに使う切手として、日本郵便は弔事用85円普通切手を販売しています。意匠は菊で、2024年9月2日に発行されました。落ち着いた絵柄なので、喪中の年に出す寒中見舞いにも収まります。
この切手を花文様と紹介したページが、数多く出回っています。花文様は旧63円の弔事用切手の意匠で、こちらは2024年9月30日に販売を終えました。印刷通販のページですら誤ったまま残っているため、窓口では「弔事用の85円切手」と額面で伝えて求めてみてください。
85円の弔事用普通切手の意匠は菊であって、花文様ではありません。
### 年賀はがきの余りは使わない
余った年賀はがきを寒中見舞いに転用するのは避けます。年賀はがきには「お年玉付郵便葉書」の表示と賀詞の絵柄が入っており、そのまま寒中見舞いとして出すと、受け取った側に年賀状として読まれてしまうでしょう。喪中の年に祝いの体裁の紙で便りが届けば、相手は面食らいます。書く中身を変えても、紙が年賀のままでは意味が通りません。
書き損じや余りの年賀はがきは、郵便局の窓口で手数料を払えば通常はがきや切手に交換してもらえます。交換の条件と手数料は郵便局の案内で確かめてください。急ぐなら、鳩の通常はがきを新しく買うほうが早いところ。手元の年賀はがきを使いたい気持ちは分かるものの、寒中見舞いは年賀の挨拶と切り離すために出す便りなので、紙のほうも切り離しておきましょう。
## 書くときに迷いやすいところ
寒中見舞いの書き方には、細かな作法がいくつも語られています。ここでは、根拠がどこまであるのかを確かめながら、迷いやすい4つを見ていきます。
### 句読点を省く慣習に規定はない
寒中見舞いや喪中はがきでは句読点を打たない、という慣習が知られています。毛筆の文化の名残だという説明が添えられることも多いものの、その説の裏付けは見当たりません。日本郵便の公式ページにも、句読点を禁じる記述はないところ。
ここに挙げた文例も句読点を省いていますが、それは慣習に合わせただけです。読みやすさを取って打つ家もあれば、慣習どおり省く家もあります。どちらを選ぶかは、受け取る相手の年齢や地域の慣習に合わせて決めてください。句読点の代わりに、文の切れ目で改行するか一字空けると、打たなくても読みづらくなりません。
句読点を打ったからマナー違反だと決められる根拠は、どこにも見当たりません。
### 賀詞は使わない
寒中見舞いに賀詞を入れると、年賀状に戻ってしまいます。賀詞とは「謹賀新年」「迎春」「あけましておめでとうございます」といった祝いの言葉のこと。喪中の年に出す寒中見舞いは、この祝いの言葉を避けるために年賀状から切り替えた便りなので、頭に置くのは「寒中お見舞い申し上げます」になります。
祝いの言葉を外しても、書ける言葉は残ります。「本年もよろしくお願い申し上げます」は祝う意味を含まないため、喪中でもそのまま使えるとされる言い方。相手の体を気づかう「ご自愛ください」も、季節の便りとして自然に収まります。赤や金の華やかな絵柄も、年賀を思わせるので外したいところ。落ち着いた色の絵柄か無地を選び、文面から祝いの言葉だけを抜いてみてください。
### 喪中はがきの文面をそのまま繰り返さない
喪中はがきをすでに出した相手へ寒中見舞いを送るなら、同じ内容を書き直す必要はありません。逝去の知らせと年賀欠礼のお詫びは、喪中はがきで伝わっています。寒中見舞いで同じことをもう一度述べると、相手は返事に困ってしまうでしょう。
この場合に書くのは、寒さへの見舞いと、こちらの近況です。「その後 家族で落ち着いて過ごしております」の一行があれば、案じていた相手は安心します。喪中はがきを送った相手全員へ寒中見舞いを重ねる決まりもなく、出したい相手にだけ送れば足ります。喪中はがきを出していない相手と、出した相手とで、書く中身が変わるところ。誰に何を伝え済みかを書き出してから、文面を分けて用意してみてください。
### 届いた寒中見舞いに返信しなくてよい
寒中見舞いをもらったとき、必ず返さなければならない決まりはありません。年賀状のように、届いたら返すという習慣が固まっているわけでもないところ。相手が寒さのなかで体を気づかって送ってくれた便りなので、受け取るだけで用は足ります。喪中の相手からの寒中見舞いであれば、返信を急かされている話でもないでしょう。
それでも一言返したいなら、寒中見舞いで返して差し支えありません。立春を過ぎていれば余寒見舞いに切り替え、礼と近況を短く書けば十分です。喪中の側が返す場合も、祝いの言葉を使わない点は同じ。年賀状のように期限に追われるものではないため、寒さの見舞いとして落ち着いた頃合いに出してください。
## まとめ
喪中の寒中見舞いは、松の内が明けてから立春の前日までに出すとされています。ただしこの時期を定めた公式の決まりはなく、日本郵便の案内にも差出期間の記述はありません。松の内の区切りも関東は1月7日、関西は1月15日とされる一方で1月10日とする地域もあり、全国で一つに決まっているわけではないところ。迷ったら1月中旬に届くよう出せば、年賀状と重ならずに済みます。出番になるのは、喪中を知らない相手から年賀状が届いたとき、12月の不幸で喪中はがきが間に合わなかったとき、喪中の相手へ年始の挨拶を送りたいときの3つです。使うはがきは、鳩の意匠の通常はがき85円か、私製はがきに弔事用85円普通切手(意匠は菊)を貼る形になります。胡蝶蘭のはがきと63円のはがきは2024年9月30日で販売が終わっているので、古い案内を頼りに買いに行かないでください。まずは自分がどの場面にあたるかを決めて、文例の括弧を差し替えるところから始めましょう。
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